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2019年5月、企業に職場でのパワハラ防止を義務付ける「改正労働施策総合推進法」(いわゆる「パワハラ防止法」)が成立しました。
パワハラ防止法は、企業に対し、事業所内におけるパワーハラスメントを防止するための措置を義務付ける法律です。
法律の規程は以下のような内容です。
①事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない(法30条の2第1項)。
②事業主は、労働者が上述①の相談を行ったこと又は企業による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他の不利益な取扱いをしてはならない(法30条の2第2項)。
③事業主は、①に規定する言動を行ってはならないことその他当該言動に起因する問題(「優越的言動問題」)に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる措置に協力するように努めなければならない(法30条の3第2項)。
④事業主(法人である場合には、その役員)は、自らも、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない(法30条の3第3項)。
大企業では2020年6月1日から、中小企業でも2022年4月1日から対応が義務付けられます。
具体的には、
などが挙げられます。
パワハラ対策は、形式的に行っても意味がありません。
放置していると離職者が増大し、SNS上で拡散されて致命的なイメージダウンとなります。
パワハラ防止法に違反した場合の罰則は設けられていませんが、場合によっては「勧告」「指導」の対象となりますし、不法行為責任としての「使用者責任」や債務不履行責任としての「職場環境配慮義務違反」を根拠に損害賠償請求を受ける可能性もあります。
経営者としては、決して軽視できない経営施策となりますので、心して掛からなければなりません。
昔は、パワハラという言葉もありませんでしたし、怒鳴ったり、机を叩いても、それは「指導」として特段問題になることはありませんでした。
しかし、時代は変化しており、パワハラは労働問題となります。
ですから、パワハラとは何かをきちんと理解する必要があります。
2019年5月に成立したパワハラ防止法では、パワハラを
と定義されています。
そして、厚労省は、職場のパワハラについて、以下の6つに分類しています。
厚労省は、事業主に対し、「雇用する労働者又は当該事業主が行う職場におけるパワーハラスメントを防止するため、雇用管理上次の措置を講じなければならないとして、概要、以下の3つを挙げています。
1 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
事業主は、職場におけるパワーハラスメントに関する方針の明確化、労働者に対するその方針の周知・啓発を行う。
2 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
事業主は、労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ、適切かつ柔軟に対応するために必要な体制を整備して、相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
3 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
事業主は、職場におけるパワーハラスメントに係る相談の申し出があった場合において、その事案に係る事実関係の迅速かつ正確な確認及び適正な対処を行い、再発防止に向けた措置を項ずること
具体的な対応としては、
経営トップが組織内でのパワハラは断じて許さないという明確な意思表明を行い、社内に通知すること(社内報、社内LAN、一斉メール等)はもちろんのこと、
などが挙げられます。
相談窓口担当者などが、アンケートや直接の相談などでパワハラの相談を受けた場合、どのように対応すべきでしょうか。
1 ヒアリング
まずは関係者のヒアリングを行います。
流れとしては、相談者(被害者)、関係者(同じ部署の同僚や状況を知る人)、行為者(加害者)の順に話を聞きます。
担当者は、中立な立場で、「事実」を確認します。行為者が被害者に対し、「いつ」「どこで」「どのような行為を行ったか」を聴取します。
但し、関係者に聴き取りを行う際には、必要以上に多くの者に知れ渡らないように注意する必要があります。
相談者の聴き取りの段階で事実が曖昧な場合には、録音をすることを勧めることもあるでしょう。
2 事実の判定
できるだけ客観的な事実、証拠から事実を認定します。
社内抗争、冤罪もありえますので、慎重に判断することが必要です。場合によっては顧問弁護士に相談することも有力な選択肢と言えるでしょう。
3 懲戒処分・人事措置
パワハラ事実が認定された場合には、懲戒処分と配置転換等の被害者救済措置を取ります。
パワハラ加害者は、会社のために良かれと思って行動している熱心な人物も多く、自身がパワハラをしているという認識の無い場合が多いのが実情です。
過剰な処分をすると、「不当な処分を受けた」として、訴えられたり、労働審判が申し立てられたりする可能性もありますので、慎重に判断しなければなりません。可能であれば処分の内容は、顧問弁護士に相談するとよいでしょう。
但し、処分が甘すぎると、パワハラに甘い会社と認識され、他の従業員に示しがつきません。
加害者と被害者の双方に対して、企業として取り組んだことを真摯に説明し、理解を得ることが重要です。