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債権回収の考え方

債権回収の考え方

 事業者が利益をあげていく為には、売上を上げること、コストダウンを図ることが重要であり、事業主の皆様はこれらに関しては日々努力されていることでしょう。
 しかし、こと債権回収に関してはどうでしょうか。きちんと売掛金の回収ができなくとも、そのまま惰性で取引を続け、売掛金が膨れ上がって不良債権化していたり、突如取引先が倒産して慌てたりといったことはないでしょうか。
  
我が国の商取引では取引先との信頼関係を重視して、互いの債権回収を念頭においた関係を築けていないケースがまだまだ多く有ります。しかし、いくら売上を上げても、現実に債権(売掛金)回収ができなければ意味はありません。

債権回収は、

(1)取引の開始(契約締結の時点)の段階、

(2)債権管理の段階、

(3)強制回収の段階

の各段階に分かれます。

 
そして、(1)の段階で準備をしておけば、(2)、(3)の段階で有利に債権回収を図ることができ、また(2)の段階を適正にしておけば、早期に(3)の段階に進むことができ、結果的により多くの債権回収を図ることができる可能性が高まります。

 
弁護士が関与するのは、主に(1)の段階と(3)の段階といえますが、(3)の段階でご相談を受けても、(1)の段階で契約内容の不備があったり、そもそも契約書が存在しなかったりで結局債権回収が図れない場合も出てきます。

 
従って、(1)の段階で取引開始(契約締結)の時点で弁護士によるチェックを受けておかれることをお勧めします。
 
また、(3)の段階での債権回収の基本は、1.迅速性、2.経済性、3.確実性にあり、事案に適した方法を選択する必要があります。

 
すなわち、(3)の段階でぐずぐずしていると、他の債権者に先を超されて結局回収不能になってしまうこともあるかもしれません(迅速性)。取った方法は間違いではないが、回収費用が現に回収した金額を上回ってしまう(費用倒れ)こともあるかもしれません(経済性)。また、支払の約束は取り付けても結局債権回収できなくなってしまうこともあるかもしれません(確実性)。
 
従って、(3)の段階でもお近くの弁護士にご相談されることをお勧めします。

取引開始段階の注意点

 債権回収は、取引先が代金を支払わないときに初めて考えるものではありません。その時に慌てても相手の資産・財務状況がわからず、場合によっては手遅れになる場合もあります。

 
債権回収は取引の開始のときから始まっているという意識を持つことが重要です。

 
取引の開始にあたっては、

  1. 取引相手の情報収集をする
  2. 適切な内容の契約書を締結する
  3. 権利保全の準備をする

ことが重要です。

1-1取引相手の情報収集

 銀行などの金融機関は、融資を決めるに際しては、融資を申し込んだ事業者の財務状況、業務内容、事業主等を慎重に審査します。これは、融資先がきちんと全額の返済をしてくれるかのチェックをしているのです。

 審査の結果、連帯保証人をつけることを要求したり、代表者の自宅を担保にとったりします。

 事業者が商取引を行う際も、状況は同じです。取引先がきちんと代金を支払ってくれるのか、商品を納入してくれるのか等、取引前に相手の会社の状況を十分調査しておく必要があります。

1-2取引相手が個人事業者の場合

 免許証や住民票などで、本人確認を必ずしましょう。 また、可能であれば、事業規模、取引銀行(支店まで)、副業をしている場合は他の事業の概況、勤務先、保有する資産につき聴き取りをしましょう。

 いずれも後に強制執行をするための準備となります。

1-3取引相手が法人(会社)の場合

まず商業登記簿(登記事項証明書)を取得して会社の概要をチェックすることは基本

 会社だと思っていたら個人事業だった、自分は代表者だと言っている相手が実は代表権限が無かったという、取引内容が会社の目的の範囲外だった(取引は無効)というようなこともありえますので、必ずチェックするようにしましょう。

 取引相手の概要を知るには、現在の状況だけでなく、ある程度過去の歴史も調べた方がよいので、「履歴事項証明書」の交付を受けるようにしましょう。取引の開始後も、取引相手の内容が変わってしまう可能性がありますから、できれば定期的にチェックすることが必要です。

会社・代表者の不動産登記簿謄本(登記事項証明書)を取得

 担保の設定状況から、取引相手の財産状況について、ある程度推測することができます。

 取引開始時に担保の設定を受けなくとも、後に支払が滞ったときの仮差押などの保全処分の準備となります。

会社・代表者の不動産登記簿謄本(登記事項証明書)を取得

 経営者の考え方や職場の雰囲気(活気)は、相手先を訪問して調べるのが一番確実です。

 登記簿謄本上は立派な経営をしているように見えても、実際訪問してみると、全く印象が異なる場合もあります。また、日ごろからまめに訪問していると、会社の景気が上向きなのか、下降気味なのか早めに察知することができます。従業員が頻繁に入れ替わっていたり、活気がなくなっていたら要注意です。

 取引中も、過去の取引に関わらず、常に債権回収は考えておかなければならないのです。

2-1契約書の作成

企業取引においては、様々な場面で契約が交わされています。しかし、取引の際に契約書を作成していない事業者の方も多いようです。

 契約書の作成を勧められても、

「契約書の作成を希望すると、取引相手に信用していないと思われるので作らない。」

「特に今まで取引先とは問題が起きていないから、契約書なんて作らなくても大丈夫。」

「これまでも口約束でやってきたのに、今更契約書を作りましょうとはなかなか言えない。」

などという声をよく聞きます。

 確かに、契約は当事者の合意だけで成立するので、口約束でも契約は成立します(ただし、根保証契約を含む保証契約は,契約書などの書面によってしなければ無効になります。また、法律で特別に契約の際に契約書等の作成が必要とされる場合があります)。

 しかしながら、契約書を作成しなかったことによるトラブルの法律相談は、弁護士のもとに多数、寄せられています。

 相手を信頼して契約をしたのに、約束の時期に商品が納入されない、約束した金額の売掛金を支払ってくれないなど、トラブルが起きてから、慌てて弁護士事務所に駆け込んだとき、弁護士からは必ず契約書はありますかと聞かれます。

 
「こういう内容の契約を結んだ」といくら言ってみても、それを直接裏付ける契約書が存在しないのであれば、その契約の内容を証明することは大変で、水掛け論となって泣き寝入りということにもなりかねません。

 
裁判になった場合、契約の内容を立証する責任は通常自分にありますので、いくら真実が自分の言ったとおりだったとしても、裁判では、負けてしまうこともありえます。

 そのため、「まだ問題がおきたことがないから作らなくてもよい」のではなく、「トラブルが起きないために」「トラブルが起きたときでも迅速に解決するために」契約書を作る必要があるのです。

 事前に契約書が作成されていれば、何か問題が起きても、その契約書の条項にしたがって処理すればよく、取引相手との円満な関係が維持できることもあります。

 自分から契約書の作成を作りましょうなどというのは、取引相手に信用していないと思われるのが心配だとか、自分からは言い出しにくいという方は、契約書は、自分の権利を守ると同時に、相手の権利も守るものだと認識を変えてみては如何でしょうか(自分が約束を守れず、相手に迷惑をかけることもあるかもしれないのですから)。

2-2契約書作成に関して注意すべき点

 一般の方がよく目にする契約書には、売買契約書・金銭消費貸借契約書・賃貸借契約書・請負契約書などがあります。契約書は契約当事者間の約束事を取り決めるもので、特に定まった様式はありません。

 継続的な取引を行う場合には、以後の全ての契約の基本的事項について取り決めた「取引基本契約書」を作成するようにしましょう。

 また「取引基本契約書」を作成した場合であっても、個別の取引を行う際には、個別の「契約書(売買契約書、請負契約書等)」を作成するようにしましょう。

 契約書には、契約当事者、取引条件について明瞭に記載します。当事者については、代理人(代表者)なのか、使者にすぎないのか、代理権限について確認する必要があります。取引条件については、契約金額、契約対象(目的物)の種類、数量、品質、納期、代金の支払期限、支払方法などは最低限記載しておく必要があります。これらの一般的な条項については、それぞれの企業の取引条件に応じて記載していくことになります。

 契約書を作るにあたっては、上記のような取引の基本条項に加え、取引の内容に応じた特約条項を加えることも重要です。基本的な特約条項には以下のようなものがあります。

期限の利益喪失条項

 民法の原則では、通常、支払期日が来るまでは代金の支払を請求できません。従って、そのままでは、相手先が分割払いの代金の支払いを数回に渡って支払わなかったり、第三者に振り出した手形が不渡りになるなどの明白な信用低下があったとしても、全額の請求をすることはできません。

 ところが、特約条項として手形の不渡り・債務不履行・破産・民事再生申立等の事由があった場合には、残債務について期限の利益が喪失する旨定めておけば、支払期日が到来する前に得意先に対して請求ができるようになります(現実に債権回収できるかは「否認権」等の問題がありますので、専門家に相談されることをおすすめします)。

契約解除条項

 契約の解除の可否について、争いになることが多いので、解除事由を明確にした解除条項を入れておくとよいでしょう

損害賠償条項

 支払を遅延した場合の遅延損害金をあらかじめ約定しておくと、支払いを遅滞した場合、遅延損害金の支払義務が明確になりますので、遅滞の損害填補ができるうえ、相手先にはプレッシャーをかける効果があります。

管轄裁判所条項

 裁判所は全国各地にありますが、民事訴訟法の規定で訴訟を提起できる裁判所が決まっています。原則的には被告の住所地(本店所在地)を管轄する裁判所ですが、内容によって複数の裁判所に管轄が認められています。

 裁判を起こす際、遠方の裁判所にしか管轄が認められないと、裁判を起こす時間的経済的負担が大きくなりますので、特約で管轄を自社の本店所在地の裁判所に限定しておくと、通常そのような心配はなくなります。

3-1取引開始時に支払を確保する方法

取引開始の際、取引相手の情報を検討した結果、信用に不安がある場合があります。そのような場合には、可能な限り、担保を取りましょう。

 

 担保とは、債務者が債務を履行しない場合に備えて、債務者側から債権者に提供されるもので、債権の弁済を確保する手段となります。

 担保には、「物的担保」と「人的担保」があります。

 「物的担保」には、最も代表的なものとして、通常債務者又は第三者の不動産に設定する「抵当権」「根抵当権」がありますが、その他にも、債権の担保のために、物の所有権又は権利を債権者に移転させる「譲渡担保権」、債務者が弁済しない場合に特定の財産を代物弁済として給付することを約束する「代物弁済予約」、債権者が担保として特定の財産を受け取り、債務の弁済があるまでこれを留置することにより間接的に弁済を強制し、弁済の無い場合は、担保の目的となった財産から優先弁済を受けることを内容とする「質権」等があります。

 「人的担保」の代表は、「連帯保証」です。主債務者の財産とは別に、連帯保証人の一般財産を債権の引き当てとするものです。取引の開始時には取引相手の信用不安が無かった場合でも、取引途中、債務不履行時でも要求するようにしましょう。

 連帯保証は、連帯保証人となる人と連帯保証契約を締結しなければなりません。契約書を主債務者に預けて、連帯保証人となる人の署名と捺印を貰ってきてもらう場合があるかもしれませんが、誰でも連帯保証などしたくありませんから、主債務者が署名・捺印を偽造する場合があります。連帯保証人の保証意思をきちんと確認するようにしましょう。

 また、連帯保証は、連帯保証人となる人の一般財産を把握するものですから、資産も調査しておく必要があります。

3-2 手形を預かっておく

 手形については、資金不足を理由に手形金額を支払えない場合、振出人は、「不渡処分」を受けます。6か月以内に2回不渡処分を受けますと、「銀行取引停止処分」となります。

 銀行取引停止処分を受けますと、その日から2年間、銀行取引ができなくなりますので、事実上倒産することになります。

 そのため、手形の振出人は倒産を防ぐために何としてでも支払期日に手形を決済しようとしますので、単に売掛債権を有しているよりも、手形を発行してもらった方が債権回収には有利といえます。

 また、手形には、取引相手の代表者や第三者の保証をつけることもできます。手形の表面の振出人欄に共同振出人として署名捺印を貰う「共同振出」と、手形の裏面に署名捺印を貰う「裏書」です。

 共同振出は、両者が振出人として同じ債務を負担することになり、裏書は、手形が不渡りとなったときに、裏書人に対して手形金額を支払うよう請求することができます。

3-3 公正証書を作成しておく

 公正証書とは、公証人が公証人法・民法などの法律に従って作成する公文書です。

 

 公証役場という公の役所で作成され、公証人がまとめた公文書ですから高い証明力があり、裁判においてもその内容の信憑性が事実上かなりの程度認められています。

 また、金銭債権については公正証書の内容に、強制執行認諾文言を入れておけば、債務者が金銭債務の支払を怠ると、裁判所の判決などを待たないで直ちに強制執行(差押)手続きに移ることができます。

 債務者が支払をしないときには、通常は裁判を起して裁判所の判決等を得なければ強制執行をすることができず、時間と費用がかかりますが、公正証書を作成しておけば、すぐに、執行手続きに入ることができます。

 支払いをしないときには、すぐに強制執行(売掛金や預金等を差し押さえる)ができるということですから、取引先に対する心理的な圧力は相当なものになり、単に契約書を有しているよりは、支払いが確保されやすいということになります。

 ただし、このような効力があるのは、金銭の支払いについての公正証書だけで、「商品を渡せ」といった内容の金銭債権を内容としない公正証書についてはすぐに強制執行をすることはできません。

 公正証書を作成するには、債権者と債務者が最寄りの公証役場に出向き、公証人に作成してもらうことになります。持参するものとしては、本人確認資料、契約書、実印、印鑑証明書、法人の登記簿謄本等、代理人に委任する場合には委任状、公証役場に支払う手数料(参考:目的の価額が100万円まで→5000円、200万円まで→7000円)等が必要です。事前に公証役場に必要な書類等を確認しておいた方がよいでしょう。

 持参すべきものが揃っており、簡単な内容の公正証書であれば、その場で作成してもらえることもあるようですが、通常は次回の予約をして帰り、改めて予約した日時に公証役場に赴き、署名・捺印等の手続をすることが多いようです。

3-4 契約書が無い場合

 事前準備が間に合わず、契約書が無い場合はどうすればよいでしょうか。

 債権が存在することの立証責任は、債権者側にあります。従って、裁判となった場合、債権の存在を立証できないと敗訴してしまいます。債権者としては契約書に代わる債権の存在を立証できる証拠を集めておかなければなりません。

 相手方が債務の存在を現時点で認めている場合、債務の存在を認め、弁済を確約する旨の債務承認書を取っておくとよいでしょう。実印、印鑑証明が取れれば、なおよいでしょう。

 債務承認書が取れない場合、債権の存在を間接的に証明する証拠を集めておくしかありません。見積書、注文書、納品書、FAX記録(「帯」の送信日時等も意外と大事です)、メールのやりとり、電話の会話の録音、現場写真、手帳の記載等、債権の具体的内容がわかりうる資料をなるべく多く収集しておく必要があります。

4 債権管理の注意点

 契約書を取り交わし又は納品するなどして債権が発生した後は、適切な債権の管理が重要となります。

具体的には、

  1. 債権額の管理
  2. 債務者の管理
  3. 時効の管理
  4. 債務者の信用の管理

が必要となってきます。

4-1 債権額の管理

 当然のことですが、債務者に対して請求できる金額(債権額)を確認しておかなければなりません。

 債権額とは、元本だけとは限りません。債務者が支払期日に遅れている場合は、遅延損害金や費用を請求できることもあります。

 債務者の支払意思、支払能力に限らず、請求できる最高額はいくらなのかを確認し、間違いなく最高額を記載した請求書を発行するようにしましょう。

 請求できる金額より高額の請求をしてしまった場合、債務者に弁済拒絶の理由を作ることになってしまいますし、逆に請求できる金額より低額の請求をしてしまった場合、弁済を求める交渉が、債権者にとって不利な状況から始めることになってしまいます(元本が10万円、遅延損害金等を含めると12万円となるような場合、10万円の請求書を出しますと、回収できる金額は元本割れすることも多くなりますが、遅延損害金等を含めて請求しておくと、遅延損害金等を債権者が譲歩して、元本10万円は確保できるといった交渉が可能となります)。

4-2 債権額の管理

 これも当然のことですが、誰に請求することができるのかを確認しておく必要があります。

 直接の債務者、連帯保証人のみならず、直接の債務者や連帯保証人が死亡していた場合、相続人が相続していれば、相続人に対しても債務者として請求することができますので、相続放棄の有無の確認が必要です。

 次に、債務者の所在の確認をしておかなければなりません。債務者は都合が悪くなると、突然連絡を取れなくなる場合がありますので、住民票上の住所、契約書上の住所、携帯電話の番号のみならず、自宅の固定電話、勤務先、実家や兄弟などの親族の住所なども可能であれば確認しておきたいところです。

 債務者が法人の場合、定期的に商業登記簿を取り、所在地や役員の変動の有無を確認しておきましょう(債務者は、経営が苦しくなってくると、債務を逃れるため、所在地や役員を頻繁に変更したりします)。変動を確認した場合、債務者に変動の理由を尋ねてみましょう。債務者にとっては、監視されているという心理的な圧力を受けることになります。

4-3 時効の管理

 民法上の時効期間が経過するまで債権回収が出来ていないということは通常あってはならないことですが、2020年4月に施行された改正民法は、時効の規律について変更しています。

 くれぐれも注意が必要です。

4-4 債務者の信用の管理

 債務者の信用の管理は意外と重要です。

 業界内の噂にはアンテナを張っておきましょう。火の無いところに煙は立ちません。「あそこは危ない」「最近期日に支払ってもらえない」という噂を聞きつけたときには、出来るだけ取引を縮小し、現金で対応するようにすることも検討しなければなりません。

 時折、取引先の事務所を訪問してみる、というのも有効な信用の確認方法になります。

5 取引先が破綻した場合の債権回収

 不幸にも取引先が破綻してしまった場合、通常は債権回収は困難です。取引先が自己破産した場合、破産手続の中で微々たる額の配当が得られるか、全く得られない可能性もあります。

 多くの場合は回収不能として処理せざるを得ないと思われます。

 しかし、以下のような手段を講じて、回収が出来ないかは検討の余地があります。

5-1 相殺

 取引先が破綻してしまった場合でも、取引先に対して債務を負っている場合には、自社の債権と相殺して、取引先に対する債権を回収したのと同じ効果を得ることができます。

 相殺の可否の判断や、相殺の有効な意思表示を、誰に対してどのような方法で行うかについては、専門的な知識が必要な場合があります。

 弁護士に依頼すれば、相殺の可否の判断、意思表示の相手方等を適切に選択し、内容証明郵便等で相殺の意思表示を行ってもらえるものと思われます。

5-2 担保権の実行

 取引先が破産しても、債権者の担保権は別除権として手続とは別個に行使することが可能です。

 あまり多くは無いかもしれませんが、取引先の不動産に抵当権を設定しているような場合には、競売の申立てを行います。

 商品を所有権留保付きで売買していた場合には、取引先の了解を得て当該商品を引き揚げます。

 了解を得て行わなければ窃盗罪等に問われる可能性がありますので、工場等に押しかけて行って勝手に引き上げてくることの無いよう、くれぐれも注意が必要です。必ず同意書をもらうようにしましょう。