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1.遺体の引き取り・埋葬
遺体の引き取りは、親族等が行います。しかし、身寄りの無い方の場合、施設としてはどのような対応をすべきでしょうか。
「墓地、埋葬等に関する法律」では、「死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないとき」には、市町村長が遺体を引き取り、火葬・埋葬することとされています。その費用は死亡者の財産等を充て、不足する場合は市町村の負担となります。
なお、上記「死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないとき」には、相続人等が事実上引き取りを拒んでいる場合も含むと考えられていますが、市町村と連携をとる必要があります。
実際には、施設が委託を受けて行う場合もあります。
死亡者が墓地を有していれば当該墓地に埋葬し、有していなければ、市町村の共同墓地に埋葬されることとなると思われます。
可能であれば、身寄りの無い利用者に関しては、死後事務や墓地について、生前に確認を取っておくが重要です。また、遺言を作成し、遺言執行者を指定しておけば、施設の負担は大きく減じられますし、利用者も自分の希望通りの対応を受けることが出来ます。
(墓地、埋葬等に関する法律)
第9条 死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。
2 前項の規定により埋葬又は火葬を行つたときは、その費用に関しては、行旅病人及び行旅死亡人取扱法(明治32年法律第93号)の規定を準用する。
2.未払いの施設利用料
死亡した利用者に未払いの施設利用料が存在する場合、当該未払債務は死亡した利用者の相続人が承継します。
相続人に連絡し、死亡者の財産から支払って頂くのが通常の対応となります。
入居時に預り金があり、死亡の場合に未払金が存在すれば控除できる契約があれば、これにより回収することも可能です。
しかし、身寄りがなく、相続人が不存在の場合には、家庭裁判所に相続財産管理人の選任申立を行い、選任された管理人から支払ってもらうことが考えられます。
もっとも、この申立は裁判所に多額の予納金を納めなければならないため、未払利用料の額によっては費用倒れとなる可能性があります。
したがって、身寄りの無い利用者に関しては、特に、未払い利用料の額が多額とならないよう、日常から適切な管理が必要といえます。
3.遺品の処分
遺品も相続財産ですので、相続人が承継します。
施設が勝手に処分することは出来ませんので、くれぐれも注意してください。
相続人には引き取り義務がありますので、相続人に引き取りの連絡を入れることになります。
しかし、相続人にとっては遺品が不要であるケースも多く、引き取りを拒まれることも想定されます。この場合には、相続人全員(一部の相続人だけでは不可)から所有権放棄書や同意書をもらって、施設の方で処分することも検討しなければならないでしょう。
相続人調査の結果、相続人が不存在の場合でも、施設は勝手に処分することは出来ません。上述のように、相続財産管理人の選任申立てを行い、引き継ぐ必要があります。それまでは紛失したり毀損することがないように注意して保管しなければなりません。
4.相当額の遺産が残されていた場合
相当額の遺産が残されていた場合、施設と死亡者の関係によっては、施設が特別縁故者として財産の分与を受けることが出来る場合があります。
特別縁故者として財産の分与を求めたいという場合には、必ず相続財産管理人の選任申立てが必要となります。
見通し等は慎重に判断しなければなりませんので、顧問弁護士がいれば相談してください。
5.利用者に成年後見人が選任されていた場合
成年後見は、本人の死亡により終了します。代理行為等は行えなくなります。
しかし、近時の法改正で、成年後見人は、被後見人の死後も一定の事務(財産の保存に必要な行為、弁済期の到来した債務の弁済、火葬又は埋葬に関する契約の締結等)を行うことが出来るようになりました。
したがって、身寄りがない場合には、後見人にこれらの事務を依頼することを検討します。
但し、要件を満たしている必要がありますので、後見人とよく相談されることをお勧めします。
なお、保佐、補助、任意後見には適用されません。
施設としては、成年後見人が選任されている場合であっても、必ず後見人に死後の事務を行ってもらえるとは限らないことを踏まえて、事前に本人死亡後の事務に関し、確認をとっておくことが重要です。
介護保険対象事業について、福祉サービスの利用には事業者と利用者本人の間での契約が必要です。
家族等との契約は不可となります。
施設やサービスの利用希望者と契約を締結するには、契約相手が契約に必要な判断能力を有していることが必要です。
判断能力を欠く者と交わした契約は無効です。
判断能力を欠く場合には、成年後見人等と契約を交わす必要があります。家族が代筆しての契約は意味がありません。
判断能力があるかどうか疑わしい場合で、成年後見人等が選任されていない場合には、医師の診断書等の提出を求めることを検討することになるでしょう。
高齢者介護施設における感染症対策については、2019年3月に、厚生労働省により「高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版」が公表されています。
施設事業者としては、まずはこのマニュアルの内容を確認し、実行していくことが基本となります。
介護施設は、感染症に対する抵抗力が弱く、感染後重篤化しやすい高齢者が集団生活する場ですので、スタッフの一人一人が高い意識を持ち、施設としても事前に対策をとっておくことが重要です。
具体的には、日常の事前対策、実際に発生してしまった場合の対応マニュアル等を作成し、日常から感染を想定した訓練を行っておくようにしましょう。
実際に感染症が発生してしまった場合には、状況の把握、感染拡大の防止、医師との連携、行政への報告を可及的速やかに行うことになります。
もちろん、感染者は個室対応とするのが原則となります。
職員が感染した場合には、当該職員の症状が消失しても、更に数日間の就業制限または一時的な配置転換を検討することも必要となるでしょう。
高齢者(施設利用者)に多額の財産があると、将来相続人となる親族間の折り合いが悪い場合、将来遺産争いが生じる可能性が高くなります。
また、生前に自分に有利な遺言を書かせようと、相続人間で施設利用者を自己に取り込もうとするケースも見られます。
施設が相続人間の争いに関与するべきではありませんが、施設利用者から遺産争いを危惧する相談を受けた場合、どのような対応をすべきでしょうか。
遺産争いの防止に最も有用な対策は、遺言を作成しておくことです。
遺言に、どの相続人に何を相続させるかを遺言に明確に書いておくと、相続人は、基本的には遺言の内容に従わざるを得ませんので、通常死亡後に必要となる遺産分割協議を不要にすることができます。
遺言に遺言執行者を定めておけば、その遺言執行者が遺言の内容を実現してくれます。
ただし、遺言は、その形式が厳格に定められているため、せっかく作成したものでも有効とは認められない場合もあります。
また、内容によっては、遺留分という遺言によっても奪うことが出来ない相続人の権利を侵害してしまっており、逆に紛争を生じさせてしまうこともあります。
もし、施設に顧問弁護士などがいらっしゃる場合は、一度、出張に来てもらい、法律相談をい受けてもらうとよいでしょう。もちろん、その際には施設利用者は席を外すようにしましょう。
通常、専門家は、遺言を作成する場合、公証人が関与する公正証書遺言を勧めるものと思われます。
その際には、公証人が施設に出張して作成することも可能ですので、その際には、個室を準備して差し上げて下さい。
従業員のミスが軽微なものである場合、就業規則に基づいた相当な懲戒処分を行うことや、成績評価において不利益な評価をすることは可能です。
もっとも、懲戒処分は、過失行為と処分が均衡していることが必要であるため、軽微なミスを理由として解雇等の重大な処分を行うことは許されません。
従業員のミスが相当程度大きな場合、そのミスが労働能力や適格性の欠如によるものである場合には、就業規則に基づいた相当な懲戒処分や配置転換・降格等の人事上の措置を講ずることが可能です。事案によっては普通解雇等の厳しい措置を講ずることも可能となります。
もっとも、解雇は従業員の受ける不利益が大きいことから、ミスの程度と解雇という不利益が均衡しているか、会社として事前に安全対策や教育指導をしてきたのかを慎重に検討してから決定すべきです。
後の紛争(不当解雇等)を防止するためには、従業員と話し合い、円満に退職してもらう(退職勧奨)ことも必要です。
従業員の会社に損害を負わせた行為が、故意や重大な過失による場合等、悪質な場合には、会社秩序の維持のため、懲戒解雇を検討することになります。